例年のことですが春が近づいてくると、乳幼児の新患さんが増えます。
夜泣き、癇虫(かんむし)、
そして湿疹...。
春になるとこれらの症状が子どもに出てくるのはどうしてでしょう。
東洋医学では、春は「生」。
草木が芽を出して成長していく季節です。
何もなかったところから、芽が吹き出てきて、
そして上へ上へと伸ばしていきますね。
自然界では「出す」ことと「上昇する」という向きの、
目には見えないエネルギーが働いてくるということ。
私たち人間も自然のなかで生かされていますから、その影響を受けます。
なので、皮膚から吹き出物(湿疹)が出るというのは自然な現象です。
何かが出てくるというのは、その内側に根っことなるものが蓄えられてきたということ。
主なものは老廃物。
乳幼児の場合では、胎児期の消化器官からの分泌物や母親から母体内で受けた脂肪分などの物質です。
昔、産婆さんが出産を手伝ってくれていた頃には、
生まれたての赤ちゃんからカニババといって黒っぽい緑色の胎便を出すように働きかけてくれていました。
いまでも助産院や自然出産を手がけておられるところでは名残があるようですし、
マクリ(カイニンソウ)などの「胎毒下し」を処方してくれる漢方薬局もあります。
当院に通ってこられるなかでも、途中のバスで乗り合わせた見ず知らずのお婆さんから、
「胎毒やね~」
「カニババ足りんかった(出し切れなかった)んやね~」
と、声をかけられたというお母さん方がいらっしゃいます。
昔の人は知っていたんですね。
現代医学では、脂漏性湿疹であったり、場合によってはアトピー性皮膚炎などの診断名のもとに塗り薬で抑えてしまおうとする傾向にありますが、ちょっと考えものです。
体は出す必要があって出しているのです。
いわば、デトックス。
こうした乳児湿疹が春に多いのは、
季節の芽吹きのエネルギーを借りて出しているからに他なりません。
「出ている」のではなく、「出している」。
この感覚は持っておいて欲しいかなとは思います。
病気ではないかと不安になり過ぎないようにすることも大切なことですね。