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うっかりドーピングと、麻黄湯


風邪やインフルエンザの心配な季節になってきました。

風邪で治療に来られる人も増えつつあります。


多くの場合は、風邪への鍼治療をさせてもらって
市販の「葛根湯」や「麻黄湯」などを飲んで、
あとはゆっくり家で休むように伝えます。

ところが、スポーツ選手が相手の場合には
そうでもありません。

実は、ドーピングに引っかかる可能性があるからなのです。


市販の風邪薬でドーピング違反? 
現実としてこれまでに何度か報告されてきた事案なのです。


咳・鼻水・発熱など、いわゆる「風邪」の症状で
市販の「総合感冒薬」を服用する人はおられるでしょう。


こうした「風邪薬」の中にはドーピング規定での禁止物質、
「興奮薬」に分類されるエフェドリン類が含まれるものが存在します。

エフェドリン類は、
中枢神経系を刺激することで集中力や敏捷性を高めたり、
血流を増加させることで競技能力の向上を図ったりできるなどの効果を生む可能性があるとして、
ドーピングの禁止物質となっているのです。

なので、スポーツ選手として、上を目指すのであれば、
注意が必要です。


こうした本人の意図しない「うっかりドーピング」を防ぐためには、
禁止物質について知識が必要です。


総合感冒薬は、
風邪の主症状に効果があるように何種類もの薬物が含まれますが、
成分は必ず表示されていますから
きちんとチェックすることができます。


イメージ的には自然由来で
身体への効果も穏やかだと思われがちな漢方薬。

ことドーピングの観点からは
安易に使用できるものではありません。

代表的なものとして
「麻黄(マオウ)」にはエフェドリン類の成分が含まれていて、
また自然由来ゆえに含有量が一定でないため、
競技中の服用は禁止されているのです。


生薬としての「麻黄」は、
発汗・鎮咳・鎮痛・抗炎症作用が期待され、
多くの漢方薬に配合されています。

頭痛・悪寒・発熱・咳・喘息などの症状から、
初期のインフルエンザや、
気管支炎・気管支喘息の発作期などに用いられる
「麻黄湯」。

風邪の初期の寒気から、
肩こり・頭痛、鼻水、鼻詰まりなどの症状や
神経痛、血行障害などに用いられる
「葛根湯」。

気管支喘息、鼻炎、気管支炎などに用いられる
「小青竜湯」。


これらの漢方薬は
競技会前の服用は避けるに越したことはないでしょう。


市民マラソンのような一般的なスポーツの大会では
こうした厳しい規定はありません。

例えば市民ランナーが「葛根湯」を、
体を温める効果があるからと
寒い日の競技で体温の低下を心配して用いることもあると聞いたことがあります。

しかしながら、日本陸上競技連盟(JAAF)公認のレースでは御法度。

もし仮に日本新記録が出たとしても
ドーピング検査で陽性反応と出れば記録も成績も取り消されるだけでなく、
選手として資格停止処分を受けることになってしまいます。


ドーピング違反とされている物質ですが、
必ずしも、身体に有害なものというわけではなく、
むしろ、摂取した選手にとって有利に働くから。

勝負ごととしてフェアではなくなるから、
というのが大きな理由のようです。



さて、トップレベルを目指す選手には、
練習日誌をつけるよう伝えています。

練習(試合)内容、その日の体調、
口にしたもの(クスリ・サプリメント、食事・おやつ)を記録していく。

冒頭のような市販薬のケースでも、
こうした記録と薬の購入履歴が残っていれば、
「うっかり」であると認められ、
数カ月の資格停止期間に低減されるかも知れません。


いずれにしても日頃からきちんとした食生活をして、
風邪をひかないコンディショニングを心掛けておきたいものです。

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